Apple 対 Epic(フォートナイト)なぜ裁判?今さら聞けない背景を一気に解説

新型コロナウイルスの流行で停滞が続く世界経済。
停滞する他業界を尻目に成長を続けるのはゲーム業界だ。中でも人気ゲーム「FORTNITE(フォートナイト)」を手がける米エピックゲームズ社(以下エピック社)の業績は好調で企業価値は現在18.5兆円を超えている。

そのエピック社が8月に新たに導入した独自の決算システムを巡り、同社は8月中旬から米アップル社と法的対立関係にある。
アップル社がアプリ配信企業に対して課す高額の手数料に反発し生まれた動きとみられるが、業界最大手の2社の対立は今後のシステムに大きな影響を与えるとし、世界的に大きな注目を浴びている。

本記事は2部構成とし、訴訟の概要や至るまでの背景を説明後、第2部にて本訴訟に対して周囲の反応及び今後の展開を検討する。

「フォートナイト」がアップル社を提訴

発端はエピック社が導入した独自の決済システム

2020年8月13日、人気ゲーム「フォートナイト」を手がける米エピックゲームズは米アップル社を介さない独自の決済システム「エピック・ダイレクト・ペイメント」を導入。
このことが規約に反するとして、アップル社はアプリストアにおけるフォートナイトの配信を停止し、2週間後に同社の開発者としての登録を取り消すと通告した。

これを受け、エピック社はアップル社が自らのアプリ配信サービスや課金システムの利用をアプリ開発者に強制していることが独占にあたるとして提訴。
具体的に問題視している点は以下の2点だ。
まず30%の手数料は高すぎるということ。
次にアプリ配信の際に「App Store」の経由を強制し、ゲームのアイテムのようなアプリ内課金にもアップルの決済システムの使用を強制していることである。

エピック社は8月17日にもアップル社を再び提訴。今回はアップル社がエピック社の開発者登録を8月28日付で抹消し、同社製品向けのソフト作成に必要な全ての開発ツール「アンリアルエンジン」へのアクセスを遮断しようとしていることについて提訴した。

1回目の審理では開発ツールのみ停止の対象外に

米カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所は8月24日に口頭弁論を開いた。イボンヌ・ゴンザレス・ロジャーズ判事はフォートナイトの配信復活は認めない一方で、エピック社が他のゲーム会社に提供している開発ツールについては「第三者に混乱をもたらすべきではない」としてアップル社が停止することは認めず、アップル社の主張の一部を退ける見解を示した。
開発ツールは登録取り消しの対象外になったが、フォートナイトを含むエピック社の全てのアプリの配信で2020年8月28日付で予定通り停止された。

2回目の審理でも妥協案はまとまらず、論争は2021年に持ち越し

同地方裁判所で、年9月28日に開かれた2回目の審理で、ロジャーズ判事はエピック社に配信停止のきっかけとなった独自の決済システムを取り下げるように促した。しかしエピック社は「独占企業の違法な規定を支援すべきではない」として拒否する考えを示した。

独占禁止法違反を争う係争は長く続く見通しだ。論争は2021年に持ち越し、本格的な審理は2021年7月に始まる。

訴訟に至った背景

10年前から問題視されていたアップル社の独占禁止法違反

アップル社による独占禁止法違反については以前から問題視されていた。
App Store以外でのアプリ配信を認めていないこと、30%の手数料を徴収していることが独占禁止法違反に当たるとして2011年に消費者グループによる訴訟が提起された以来、度々法廷で争われてきた。
実際に本訴訟の原告である、エピック社のCEOティム・スウィーニーも2019年1月時点において「30%(手数料)はコンテンツ企業の経済合理性を完全に壊してしまう」とアップル社を批判している。

今回エピック社が遂に訴訟に踏み切った要因として、技術進化やエピック社の企業規模の拡大、また社会的背景や政治経済的要因が考えられる。

技術進化によりゲーム業界もアップル社に対し強気に出られるように

米国で2019年から商用化が始まった「5G」。通信量の拡大やウェブブラウザーの進化はアプリに頼らずコンテンツやサービスを提供する可能性を生み出す。

ゲーム業界においても従来のアプリ形式ではなく、ブラウザーを通じてストリーミング配信する試みが広がっており、これが5Gで更に拡大する可能性を鑑みれば、エピック社のような企業がアップル社に対し強気に出ることができる可能性が高まる。

エピック社の企業規模拡大も大きな要因

2017年に開始したゲーム「フォートナイト バトルロイヤル」は世界的なヒット作となり、2019年には18億ドルの売り上げを上げていた。同社のPCゲームの販売プラットフォーム「エピックゲームズストア」は開設1年で6億8000万ドルの売り上げを記録。ストアのアカウント開設数は1億800万件に達した。

なおエピック社は売上の88%がゲーム企業の取り分になるというゲーム企業に有利な売り上げ分配条件を提示するだけでなく、ミニマムギャランティにより小規模なデベロッパーに機会を与えるなどして、独占契約の姿勢を示し批判を浴びつつも成功を収めてきた。

PCゲーム界でこのような販売プラットフォームを持つエピック社は、同様のサービスを手がけるアップル社にとって既に十分な脅威と化しているだろう。今回のエピック社のアクションも自社がアップル社に対する脅威となるほどの力をつけてきたからだと考えられる。

また、社会的背景の与えた影響も看過できない。
GAFA(Google、Amazon、Facebook、Appleの4社)に対しては、反トラスト法調査の一環として、米議会下院の司法委員会がデジタル市場での競争を調査している最中である。

この流れを受け、米マイクロソフト社も一部のアプリストアは20年前に独占禁止法違反の有罪判決を受けた同社のWindowsよりも「はるかに高い競争とアクセス障壁を作り出している」として批判し、GAFA批判の流れを作った。
7月29日には米国議会による公聴会も開かれ、各社が独占禁止法に抵触していないか等も問題となっている。

米中関係悪化の影響も

エピック社の株式の40%も中国IT大手の騰訊控股(テンセント)であることから米中関係の悪化が本件に与えた影響も少なからずあるだろう。
エピック社はGAFAに対し世間の注目が集まっているタイミングをあえて選び、アップルを介さない独自の決済システムの導入及び訴訟に及んだとも考えられる。

大手2社の今後の行方は?

アップル社とエピック社の今回の一件は世界中の注目を浴びている。次回は本訴訟に関する周囲の反応及び今後の展開について検討する。

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