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オリンパス撤退、深刻化するカメラ市場の苦境

 オリンパスは2020年9月30日、日本産業パートナーズ(JIP)とオリンパスの映像事業の譲渡に関する正式な契約を締結した。「オリンパス」ブランドは当面維持するが、1936年以来、創業期のオリンパスを支えたカメラ事業から撤退となった。

カメラ撤退のタイミングを模索

 オリンパスはフルサイズより小さいセンサーを使った小型で軽量の扱いやすいカメラを得意としている。中でも「PEN」(ペン)シリーズは高い人気を誇ってきた。その技術は医療用の内視鏡や顕微鏡などの研究開発にも生かされている。
 しかし、デジカメ市場はスマートフォンの普及に伴って急激に縮小。デジカメが主力の映像事業は近年、2017年3月期を除いて営業赤字続きだった。世界シェアは4%程度にとどまり、工場閉鎖などの構造改革を続けても黒字化できなかった。低価格帯の小型デジカメ事業を縮小する一方で、収益性の高いレンズ交換式カメラやハイアマチュア向けの拡販強化を進めて生き残り策を模索していたが、極めて難しい市場環境に抗えなかった。
 売上高の8割を占め、80%の営業利益率を誇る主力の医療機器事業に注力する方針を示し、カメラ事業撤退のタイミングを模索していた。

デジカメ市場はピークの8分の1に

 デジカメ市場は縮小の一途をたどっている。カメラ映像機器工業会によると、2019年の世界総出荷台数は1521万台。ピークだった2010年(1億2146万台)の8分の1に縮小している。

 さらに新型コロナウイルスの影響で、外出規制やイベントの中止が相次いだことによってカメラ市場は一段と冷え込んでいる。カメラ映像機器工業会によると、2020年5月の世界総出荷台数は前年同月比72.6%減の約37万台と大きく落ち込んだ。1〜5月の累計では前年同期比50.4%減とかつてないほど悪化している。

医療事業に経営資源を集中

 オリンパスの竹内康雄社長はかねて、内視鏡など営業利益の90%以上を稼ぐ医療事業に経営資源を集中させる方針を示していた。映像事業については、生産拠点の再編や収益性の高い製品の強化などを進めてきたが「医療に事業を集中する中、継続的な投資は難しい」(オリンパス)と判断した。
 オリンパスの20年3月期の映像事業の売上高は436億円。総売上高(7974億円)の5%強にとどまる。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、4月の同事業の売上高は前年同月比で6割近く減少していた。

市場は縮小、カメラ各社の動向にも注目

 デジカメ市場は2020年後半も冷え込みが続く見通し。業界関係者は「伸びが期待されていたミラーレスカメラの需要すら回復しないことに加え、カメラは(スマホカメラの高機能化で)プロ向けのみ(の商品)になっていく」と指摘する。
 コロナで加速したデジカメ市場の縮小がこのまま進めば、現状のソニー、キヤノン、ニコンという3強体制にも変化が現れる。オリンパスのカメラ事業撤退を機に、カメラ各社の帰趨が注目されている。

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