NTTドコモ、非通信サービスから次々と撤退
携帯電話最大手のNTTドコモが、非通信分野のサービスを次々に終了している。
フード・デリバリー・サービス「dデリバリー」を6月に終了、8月には個人間カーシェアリングの「マイカーシェア」やスマホ向け生配信サービス「新体感ライブ CONNECT」もサービス提供を終える。
異業種参入を進めてきたドコモ、選択と集中へ。
NTTドコモは、本業の国内携帯電話事業の成長鈍化を補うべく、2010年代前半から異業種参入に本腰を入れてきた。多くのサービスに社名の「ドコモ」やそのイニシャルである「d」を冠するなど本気で取り組んできたが、ここにきて次々とサービスを終了している。
「新体感ライブ CONNECT」は「dTV」にサービス統合
5月19日にオンライン開催した新サービス・新商品発表会において、ドコモは「新体感ライブ CONNECT」を8月に終了すると発表。代替として既存の動画配信サービス「dTV」に「ライブ」ジャンルを新設するとした。
山下智正コンテンツ戦略担当部長は「アプリを1つにすることでライブ『前』、『本番』、ライブ『後』までシームレスに楽しんでもらえるようにしていく」と話しているが、「新体感ライブ CONNECT」の特徴である「マルチアングル」や8K・VR映像で生配信する「8KVRライブ」の機能は引き継がれない。
「スマートライフ領域」における、高い利益目標
ライブ映像配信やカーシェア、フードデリバリー。それぞれ成長余地が大きいとされるデジタルサービス市場にもかかわらず、ドコモは一部撤退を決めた。背景にあるのは、同社の非通信事業や法人事業から成る「スマートライフ領域」における、高い利益目標にある。
同社はスマートライフ領域における22年3月期の営業利益予想を前年同期比9.3%増に据えている。本業の通信事業の同1.5%減を補い、全体の営業利益は同0.7%増を目指す計画を掲げる。
顧客基盤を生かせる事業領域へ
本業では3月に開始したオンライン専用の割安な料金プラン「ahamo(アハモ)」に、既存の料金プランから切り替えるドコモ契約者が急増している。マイナス影響が想定される中、参入障壁が比較的低く競争が激しい事業領域へのサービス展開を見直し、巨大な携帯電話サービスの顧客基盤を生かせる事業領域への「選択と集中」を急いでいるようだ。
5月11日、ドコモは三菱UFJ銀行と新たなデジタル金融サービスの提供で業務提携したと発表した。ドコモ契約者が三菱UFJ銀の預金口座を設定すると「dポイント」がたまるといった新サービスを22年中にも始め、両社による相互送客を狙う。
自前サービスという「名」を見切り、堅実な成長を見込める「実」を取るドコモ。業界トップの変わり身がライバルに与える影響は少なくない。