波紋呼ぶ電通、2021年1月より一部正社員を「個人事業主」に切り替えへ

希望する一部正社員を業務委託契約に切り替えへ

2020年11月14日、電通は一部の正社員を業務委託契約に切り替え、「個人事業主」として働いてもらう制度を開始すると発表した。

まずは2021年1月から営業や制作、間接部門など全職種の40代以上の社員約2,800人から募集し、そのうち約230人を切り替える予定だ。

適用者は早期退職をしたのち、電通が11月に設立する新会社と10年間の業務委託契約を結ぶ。電通時代の給与を基にした固定報酬のほか、実際の業務で発生した利益に応じてインセンティブも支払われる。

新制度の適用を受けると兼業や起業が可能になり、電通社内の複数部署の仕事をするほか、他社と業務委託契約を結ぶこともできる。

他社との仕事を通じて得られたアイデアなどを新規事業の創出に活かしてもらう考えだという。

実質的なリストラや労働環境の更なる低下という懸念も多い。

本決定が残業代・社会保険料なしの労働者を確保するための策、また実質的なリストラであると批判的な意見も多い。

基本報酬に社員時代に会社が負担していた社会保険料や交通費が含まれ、名目上の収入が増える場合もあるが、基本的に個人事業主であれば通勤や出張も本人負担になる上に福利厚生も無くなる。
そんな中過労死問題や長時間労働を産んだ企業体質を持つ電通が下請法を遵守して契約を履行できるかという点も問題だろう。

そもそも電通側が目的の一つとして挙げる、新規事業の創出の実現可能性自体も疑問視されている。

個人事業主が新規事業を企画した場合、それは電通の事業ではなく個人の事業であるため論理的矛盾も生じる。仮に電通の事業とみなしたとしても、他社での仕事を通して得られたアイデアを利用するやり方は、場合によって不正競争防止法違反となり、悪質な場合は受発注双方に刑事罰が課される場合もある。

独立へのリスクを取りやすくなるというメリットも。

これに対し、本制度にはこれまで完全に独立する自信がなかった「スキルのある人」がリスクを取りやすくなるというメリットもある。そのため人材の新陳代謝を高めるための試験的取り組みであるとして支持する意見も多くある。

10年間という完全な個人事業主への移行期間は、スキルのある人にとっては大変手厚いサポートである。これまで大手企業に勤めてきた人にとって、自分の価値を新たに考える良いきっかけにもなるだろう。

実質的なリストラではないかという批判に対しては、本制度は希望者のみに適用する制度であるため、大きな問題ではないとも言える。むしろ終身雇用が崩壊しているなか、中堅社員が再スタートの機会を自主的に選べるという点は、定年時に用意もなく放り出される、もしくは会社の都合で突然リストラされるよりも望ましいのではないだろうか。

また、残業が増えるのではという懸念に関しては、違う部署から基本業務以外の仕事を受ける場合、以前は残業として余儀無く請け負っていたものも、個人事業主であれば、それを別の「仕事」として請け負い報酬も受け取れるようにもなる。そのため、むしろしっかりと線引きを出来るようになるのではないだろうか。

株式会社タニタ、手取り収入平均28.6%アップの先例

本制度に類似している例として、2017年1月から株式会社タニタが導入した「日本活性化プロジェクト」がある。

こちらは応募に職種や勤続年数などの条件はなく、独立を希望する社員は退職し個人事業主となり、独立後は会社と新たに「業務委託契約」を結ぶ。
原則として独立直前の社員時代に行っていた業務を「基本業務」、その枠に収まらない仕事を「追加業務」と定義し、基本はタニタで働き続けながら他社の仕事も請け負う。

2018年3月に確定申告をした1期メンバーは、会社員時代に手にした残業代込みの給与・賞与額と比べ、手取り収入は平均で28.6%アップしたという。中には他社の仕事も請け負ったため、最終的に手取りが7割近い増加となった人もいた。会社側の負担増加も1.4%にとどまった。

個人事業主に伴う社会的信用・ローン問題といった課題解決なるか。

日本社会では法人や正社員が優遇を受け、個人事業主や非正規労働者が不利な扱いを受けることが多い。住宅ローン等が組み辛いという現状もある。

否定的な意見も多いが、電通という大手企業による本制度の導入は、固定化された人事制度や、税金や社会保障制度といった社会の制度に風穴を開けることとなるのではないか。今後の流れに期待が高まる。

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